Junko Watanabe
車で走っていると、以前往診していた患者さんの家の前を通ることがあります。懐かしい思いがよみがえります。寒い日には、「風邪をひかないようにね。」と、暑い日には、「気を付けて、冷たいものでも飲んで。」と接してくださいました。いつも、往診の度に元気づけられているのは私の方と、思い出すたびに感謝の気持ちで一杯です。
在宅医療に出会い、家で過ごすこと、日々の何気ない生活の大切さ、有難さに気付くことができました。日常を取り戻し、その方らしく生ききることができるように、寄り添っていきたいと思っています。これからも、学ぶことばかりです。患者さん、ご家族と一緒に歩んでいきたいと思っています。よろしくお願い申し上げます。
出身大学 | 山梨大学医学部 |
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専門分野 | 内科、緩和医療 |
職歴等 | 山梨県立中央病院 社会保健鰍沢病院 |
資格 | 日本緩和医療学会暫定指導医 日本在宅医学会専門医・指導医 |
その他の活動 | 葛飾在宅ホスピス代表幹事 多施設緩和ケア研究会幹事 東東京緩和ケアネットワーク世話人 |
わたクリニックは2002年8月に葛飾区に開院し、2014年5月までで2327人の患者さんを在宅で看取り、2013年は384名のがん患者さんを在宅で看取っています。
ご紹介頂いたがん末期の患者さんの約半数は1カ月以内にお亡くなりになり、さらにその半分は2週間以内にお亡くなりになっています。
在宅緩和医療は、終末期のケアが主体となっています。
治療できなくなって在宅へという現状では、病院から見捨てられた場所、悲観的なイメージしか伝わってきません。
しかし私は、在宅はその人らしく人生を生ききる場であり、命をつないでいく場と考えています。
乳がんターミナルの50歳台のお母様、お亡くなりになる3日前までお台所に立ってご家族のためにお弁当をつくられました。
肺がんターミナルの90歳台のおじいちゃん、皆に世話になったと寿司を振る舞い、カラオケを楽しみ、その夜お亡くなりになられました。
いつもその方の生き方を尊重し、命に寄り添いたいと思っています。
写真家の国森康弘さんを市民講座にお呼びしたとき、暖かい看取りは、命をつなぎ、暖かい地域をつくることができるというお話を伺いました。
私も、日々の看取りのなかで、親から子へ、孫へ命をつなぐことができたときに、看取りはさびしく、辛いものではなく、残された人々に生きる力を与えてくれるものだと感じています。
その方の人生を悔いなく生ききるために、どこで、どのように過ごしたいのか、心の声を聴きながら、一緒に考えていきたいと思います。
これからも皆様方のお力を借りながら、命をつないでいきたいと思っています。
よろしくお願いいたします。