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第20回PEG・在宅医療研究会学術集会参加報告

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2015年9月5日第20回PEG・在宅医療研究会学術集会が大阪国際交流センターで行われました。 シンポジウム「PEG栄養を含めた人工栄養法の適応と選択」において「全国多施設共同研究データに基づくPEG造設後の予後予測ツールによる適応の検討」の題で発表致しました。

栄養投与経路や栄養状態の改善を考えれば胃ろうが最適であることは大原則です。
しかし、多くの点で胃ろうはその選択の段階から問題を抱えます。
患者さんの幸せを考えるのは同じなのに意見が異なるのは何故なのでしょうか。
胃瘻の適応には生き方に関する面と栄養状態の回復を含めた機能への影響の面とがあると考えました。そのいずれにも明確な指標が存在しないことが適応を難しくしているのではないでしょうか。
前者は個々によって大きく異なり、明確な指標は難しい。
しかし、後者は過去のデータをもとに指標を提示できるのではないか、これが選択を行う上で判断をサポートする一つの材料となるのではないかと考え検討を行いました。

胃瘻によって大きな効果が得られる方もいる、不幸にして改善が得られない方もいる。
そのことは多くの医療者が認識しています。
熟練の医師の中には事前に効果を確信している方もいるでしょう。
でもそれがどういう理由に基づき、どういう効果が得られるかは漠然として分かりません。
この指標を「患者さんその人のデータ」を「過去の症例のデータに照らし合わせ」て「最も近い人の経過を提示する」ことで解決したいと考えました。

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これまでに私は一施設における胃瘻の予後と合併症の予測を行い、高い精度で推測することに成功しました(Takayama T et al. EJGH 2009)。
よいツールですが、単施設における少数のデータであるという弱点がありました。
そこでPDNを中心に過去に行われた全国調査(Suzuki Y et al. WJG 2010)のデータを解析し、予測ツールの開発を行いました。
対象は全国931例(平均年齢 81.4±7.8)、平均生存日数753日(Kaplan-Meier法)。
解析可能な584例をランダムに予測式作成用と検証用データとに二分し、人工ニューラルネットワークにより100本の予測式を作成しました。
入力因子は性別、年齢、PEG造設直前の体温、血液検査9項目、医師のID、既往歴、栄養障害、主となる疾患としました。
出力として生存日数を4段階(1: 100日以下、2: 101~750日、3: 751~1500日、4: 1501日以上)に分け予測を行いました。
その結果、予後を「1」と予測し、実際には「4」であった症例の割合は12.7%、予後を「4」と予測し、実際には「1」であった症例が17.6%でした。また予測結果へ影響する因子として「体温」「医師のID」「認知症の有無」が抽出されました(表1)。

今回の議論では座長の井上善文先生から「胃瘻を行う前の栄養状態、栄養状態が改善されるか、そのためにどのような投与方法が行われているのかといった視点が無い」とのご意見を頂きました。
また、フロアの西口幸雄先生から「これは患者さんではなく医師が判断の材料として使うのが良い」とのご意見を頂きました。
もう一方の座長の瀧藤克也先生からはほかの栄養投与方法について効果が事前に予測式で出せる可能性として期待する」とのご意見を頂きました。いずれも非常に貴重で重要なご意見でした。

予測はご指摘の通りあくまで予測で、適応の支援となる指標です。
特に過去の症例に基づいてその誰に最も近いのか、その方のどのような経過につながるかというものです。
栄養状態の改善程度や他の栄養投与方法による効果は現時点ではデータがない為、残念ながら解析できません。

今回の発表を通じ、今後の目標として「予後の予測」「合併症の予測」「嚥下機能回復の予測」「各種の栄養投与方法による栄養状態の改善程度の予測」を検証し、有用なツールの開発につなげたいと考えます。
これら一連の検証は全国規模のデータにより信頼できる予測ツールと指標の提供につながり、これに基づく診療、そのデータのフィードバックは良いループを形成していくと考えられます(図1)。
さらにこれらを全国の症例の検証を通じ見えてくる問題があろうと思います。
それらは「予後」「合併症」「嚥下機能」「栄養状態の改善程度」について事前に予測する有効な項目の抽出にもつながります。

今後PDNを通じて症例の登録、登録と共に予測結果の自由な使用を検討しています。症例の登録がなされ、多くのデータが集積することにより予測精度は向上することでしょう。
また、今回の結果から、PEG造設に関わる医師や医療施設の影響は大きいものと推測されました。
全国でのデータが蓄積されれば施設間の差の原因を検証することも可能となります。単純に技術的な問題とはならないでしょう。
ただ問題があるならば検証し、既に実施しているe-learningなどを通じて質を高めることにつながります。
それが患者さんを中心とした医療の質の向上、ひいては医療費の無駄の削減に通ずると考えます。

予測医学研究所所長
わたクリニック副院長
高山哲朗

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